「墨とコントラバス」
私小説の映画のワンシーンを永遠と見ていた。
雨の日の夏至の午後
仄暗い部屋で、デスクに紙を広げ墨を含ませた筆を動かす女
コントラバスを弾く男は姿はハッキリとしているけれど亡霊
コントラバスの音、シンセの歪んだ機械音
大きな窓の外は車が走り、人が通り過ぎて、外のような内のような、ずっと続く錯覚の時間。
時間は止まっているようで、でも墨画は描かれていくから止まっていない事がわかる。
曇りの明るさが白いshellをよりぼやかせてくれたのは、まさにこの時のためだったのかもしれません。
途中、コントラバスを抱え外へ出て、大きな窓の外から墨画を描く女の後ろでコントラバスを弾いた時、クスッと笑ってしまうステキな亡霊。広い通りを渡って通りの向こうで弾いた時、もう一度クスっと笑ってしまった。観客は音を立てることを恐れてはいけないのです。だって菊地雅晃はその気配も取り込んでくれるから。原知恵子はその気配を墨に落としてくれるから。
2人は素晴らしきパフォーマーでした。
リアルタイムリングモジュレーションド変調コントラバス 。久しぶりの音、私は心地よい。