目黒にある私の暗室には、今までに撮影した大量のネガとプリントが ほぼ全て保管されている。
先日思い立って、私が40代の頃に制作した作品を引っ張り出して見返した。
当時、私はいつもそこにたまたまあったコップやカトラリー、夕食の食材、 路地に咲く花など身近にあるものを気の赴くままに撮っていた。仕事の撮影でロケに出ても海や川の水面、光の揺らぎや森のマテリアルを その時に手元にあるカメラで、フォーマットなど気にもせずに撮影していた。
そして毎日暗室で現像し、コダックエクタルアやアグファポトリガなどの
クラシックで上質な印画紙に自家調合した現像液で丁寧にプリントしていた。
今回はそれらの銀塩プリントから十数点を選び抜き展示することにした。
デジタルが当たり前になった今、果たして何年も前にアナログで制作した
作品たちは当時と変わらぬ命を今も持ち続けているのだろうか。
写真はプリントされたその瞬間から私の元を離れて旅に出る。
たとえその作品がインクジェットによるものでも銀塩プリントでも同じだが、
その輝きが、時と共に一層増すのはどうも銀塩プリントに思えてならない。
理由は、それらのプリント作品たちを今あらためてここで見つめ直すと、私の当時の想いや記憶などは見事にかなぐり捨てられて、一枚の写真として重みを増し、ただ凛とそこに存在するからだ。
写真とは何か? 記録か記憶か? アートか否か? 工芸か?
そして何よりも、写真を美しいと感じることってなんなのかを
いまだに私は考え続けている。
吉祥寺駅から散歩するにはちょうどいいところにある 可愛い小さなギャラリーです。ぜひ珈琲でも片手にご高覧いただければ幸いです。
写真家 蓮井幹生
会期:2024年8月3日(土)-18日(日)
時間:12:00~20:00 (最終日は18時まで)
休廊日:7日(水),13日(火)−15日(木)
蓮井幹生
https://mikiohasui.com/
https://www.instagram.com/mikiohasui/
1955年東京都出身。
1984年から独学で写真を始め、1988年の個展を機にアートディレクターから写真家へ転向。新潮社の雑誌「03」を始めとするカルチャー系エディトリアルシーンで著名人のポートレイト作品を発表し注目を集める。
1990年代から撮影が続く『PEACE LAND』は作家の世界観の中核を成す作品群であり、作品集の出版を通して継続的な発表が行われ、2009年にフランス国立図書館へ収蔵される。
現在は、長野県茅野市を拠点に作品制作を行う。
【主な活動歴】
2022 個展「詠む写真、とその周辺 −循環と相似形–」 WHYNOT.TOKYO(目黒、東京)
2021 個展「無常花」 WHYNOT.TOKYO(目黒、東京)
2020 個展「For yesterday」 WHYNOT.TOKYO(目黒、東京)
2020 個展「Hidden Landscapes」 WHYNOT.TOKYO(目黒、東京)
2018 企画展「Two Mountains Photography Project 3.0」 ILHAM(クアラルンプール、マレーシア)
2017 企画展「PHOTOGRAPHY NOW」 THE BRICK LANE GALLERY(ロンドン、イギリス)
2013 個展「IMAGINE IN THE LIGHT」COMME des GARCONS BLACK SHOP(ベルリン、ドイツ)
2008 個展「PEACE LAND 2002-2007」spiral(東京、日本)
2002 個展「PEACE LAND 1995-2001」spiral(東京、日本)
【コレクション】
2015 東京工芸大学 写大ギャラリー「GELATIN SILVER SESSION 2007、2008」
2010 フランス国立図書館「詠む写真」
2009 フランス国立図書館「PEACE LAND」
2023年12月 gallery shell102展覧会
「詠む写真 水の循環」蓮井幹生 写真展
https://shell102.com/mikiohasui_yomu/