Kai Takeda Solo Exposision
2025年4月10日(木)〜27日(日)
日〜火 12:00-18:00
木〜土 12:00-20:00
水曜休廊:4月16日,23日
*レセプションパーティー:4月12日(土)18:00〜(Liveあり)
*アーティストトーク:4月20日(日)16:00〜 ゲスト/ヴィヴィアン佐藤
日本、スペインで美術を学び活動をしてきた現代美術家・武田海の展覧会を開きます。
ストレートでありながらユーモアが漂う、緩やかな「普通の反転」です。
アーティストトークではヴィヴィアン佐藤氏を迎え、現代美術について語り合います。
<情熱と受難という二つの意味を持つ「Passion」>
男尊女卑的な封建社会が100年単位の長い時間をかけてゆるやかに崩壊して行く渦中にあり、伝統的な父性の所作が無効化されるにつれ、新しい父性のあり方を誰もが模索せずにはすまなくなっている。僕とて例に漏れずそれを探しあぐねる日々だ。妻の労働に対して賃金が発生しないシャドーワーク(イリイチ)という家事や育児の上に夫があぐらを掻いて好き勝手に振る舞っているわけにはもう行かない。男が自分の仕事や効率のことだけ考えて過ごしていればよかった時代は過ぎさる。
作品には男性ヌードが頻出する。男性の視線に消費される女性ヌードという普通を反転させて、男性のヌードを多数描いたことがひとつ。また作者が数年来向き合っている大和言葉から連なる「身」(み)という言葉の思索である。
身という言葉はとても広く、心と体、社会的立場さらには個人のみならず集団などをも表せ、それらの結節点としてあり、変幻自在かつ実態を感じさせる面白い言葉だ。今回は「身」の受け皿として男の裸をモチーフとした。
絵画作品同士を繋ぐ糸は、敢えて言葉にするなら「抜け」と「湿度」であろうか。
「抜け」に関しては、モチーフが裸体であること。また構図を極力シンプルにして、ギミックの効いた伝わり安さを絵に求めていることが挙げられる。デビュー当時から彫刻が僕のメインのフィールドだったので、どこか彫刻的な平面が多いのかと思う。
「湿度」については、豊かさ(豊かな暮らしを思わせる絵の情景)の中に内省を重んじたシリアスさを絵に持ち込んでおり、筆致を含めて独自の湿度を醸し出していると思う。
主にこの「抜け」と「湿度」の2項のバランスによって絵を成立させている。
作品には家事をする男、感傷に浸る男、戦う男、忘我の境地に舞う男など様々な身の上の情熱を宿した年の頃の男たちが登場する。
また今回の展示では、8年ぶりに刺繍彫刻を制作した。これは独自技法であり和紙を刺繍した紙布が彫刻を覆うものである。女性像を展示する。(武田海)
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武田の作品を語る時に意識しておく点は、日本に向けられる海外からの視点に「男尊女卑な国」というイメージが強く存在していることです。
このようなイメージが根付いている背景には文化や社会の構造が影響していることが多く、日本政府が女性の雇用促進に取り組んでいる一方で、政府や多くの人の意識が希薄であることが、国際的な視点からも見抜かれていると思われます。
武田は数年間スペインで美術を学び作家活動をしています。この時間はこれまでの内側だけの視点を広げ、自身の作家視点に落とし込むきっかけにもなっています。
画家でありフェミニストで活動家であった母を持つ自身のルーツと、美術作家活動をする自分とが強くつながる時であり、活動の根拠となったはずです。
武田海の作品に魅了される大きな理由は、本人も語るように「抜け」と「湿度」のバランスにあります。
シンプルで直接的メッセージの「抜け」と、豊かさの中に内省を重んじたシリアスさの「湿度」。さらに武田においては創作よりも前に持つ彼の性質・ルーツも加味され、作品に独特な情緒をもたらせているように思えます。
本展覧会は女性を裸の男に反転させた料理をする、洗濯を干すなどの「普通を反転」させている作品が並びます。
この試みは、女性が行う家事や育児を男性の視点で描くことで、従来の性別役割を問い直す武田のメッセージです。
社会への問いかけは武田の美術活動の根幹となっています。ストレートでありながらユーモアが漂う、緩やかな「普通の反転」です。(gallery shell102)
武田 海 プロフィール/ Kai Takeda Profile
https://cai.hippy.jp/biography/index.html